展示品紹介
展示品紹介
―なつかしの玩具玉手箱―
【31】巴波の鯰
昔ばなしによく出てくるテーマとして、「鶴の恩がえし」に代表
されるように、動物が人間に恩をかえすというのがあります。自然
界との不思議なつながりを語ったもので、本来は言葉の通じないは
ずの相手でも、温かい思いやりの気持ちさえあれば心をかよわせる
ことができること、これらの昔ばなしは教えています。
三百年の昔、江戸時代栃木地方は大日照りにみまわれ、川水が枯
れて農家の人々はたいへん困りました。干あがった小さな水たまり
に一匹の子鯰が苦しんでいるのを見つけた農夫がこれをまだ少し流
れのある巴波川(うずまがわ)に放してやります。するとにわか雨
が降り出し、田畑がうるおいました。その後その農夫の子供が巴波
川に落ちておぼれかけた時、無数の鯰が現れてその子を押し上げて
救ったということです。
この報恩譚(たん)から、栃木地方ではしゃもじを利用して、鯰
の形をつくり、子供たちのお守りにしました。飯しゃもじの形の板
二枚をひもで結び、表面を黒く、目は白く塗り、こよりのひげが付
いています。持ち上げると、大きな口が開き、赤い布がのぞきます
。
戦後生まれの郷土玩具ですが、しゃもじを鯰に見たてた発想は全国
に類をみないといわれています。
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