展示品紹介

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―なつかしの玩具玉手箱―
【28】四日市の大入道
 江戸時代各地にお伊勢講がもうけられ、伊勢参りが盛んになり
ました。多くの制約のもとで生活していた庶民にとって、この伊
勢参りだけは幕府や各藩の規制もゆるやかで、海外旅行のなかっ
た当時最高の旅行でした。
 この参拝客を相手に土産物として郷土玩具が古くから発達して
います。伊勢路はわき街道ですが、東海道筋の宿場町、伊勢湾有
数の港町として栄えてきた三重県四日市市の祭りにこの「大入道
」が登場します。毎年九月二十五―二十七日に行われる市内諏
訪神社例祭の名物山車です。
 この祭礼は四日市祭ともいわれる全市あげての行事で、往年各
町内から繰り出される山車は二十数基を数えましたが、現在では
「大入道」と「鯨船」が残っているにすぎません。人形の裏につ
いている二本の胴串(どうぐし)を上下することによって白眼(
しろめ)が黒眼(くろめ)になり、首がのび、長い舌がでます。
子供たちが怖がらずに喜ぶというのも全体がユーモラスなためで
しょう。この山車は江戸時代の文化年間から存在しており、人形
の高さは五メートル、首の長さは一・六メートルのあります。昔
米蔵に出る悪狸(たぬき)に大入道を負かすようにそれ以上の大
きさでつくりました。工業都市四日市に童話の世界が残っていま
した。

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